公安調査官には、破壊活動防止法(破防法)において、その職務を行なう際に関係人からの求めがあれば、身分証を呈示することが義務付けられています。
「公安調査官は、職務を行うに当つて、関係人から求められたときは、その身分を示す証票を呈示しなければならない。」(破防法 第34条)
これに加えて、団体規制法に基づく立入検査に従事する公安調査官には、公安調査庁長官から立入検査を行なうことを認められたことを証明する身分証を別途所持し、これを関係者に提示することが義務づけられています。
「立入検査をする公安調査官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。」(団体規制法 第7条3項)
この条項は、立入検査に従事する公安調査官に対して、「関係者から求められ」るまでもなく、自ら身分証を提示しなければならないとするものです。
もともと団体規制法に基づく立入検査には、警察による家宅捜索などのように、裁判所が発行する許可令状が存在しません。検査開始時には、ただ公安調査官による口頭での告知があるのみです。
したがって、立入検査を受ける側にとっては、この身分証が、団体規制法に基づく立入検査であることを確認できる唯一の文書になります。
なお、公安調査庁では、身分証をめぐる公安調査官の不祥事・懲戒事件が相次いでいます(いずれも報道機関の情報公開請求で判明)。
【2000年、公安調査庁本庁】
飲食時に身分証を紛失した公安調査官が、同僚に依頼して偽身分証をパソコンで作成させ、これを所持して勤務を継続していたところ、庁内での身分証点検で偽造が発覚。偽造を依頼した公安調査官は2カ月間、実際に偽造を行なった公安調査官は1カ月の減給処分を受けた。
【2003年、中国公安調査局】
酒に酔った公安調査官が路上で一般人と口論になり、公安調査官の身分証を見せて「警察官だ」と偽って恫喝した。この公安調査官は1カ月の減給処分を受けた。