平成23年2月13日
足立区長
近藤弥生 殿
団 体 名 A l e p h
主たる事務所の所在地 埼玉県越谷市■■●-●-●
求 釈 明 書(4)
貴女からの2011年2月1日付「2011年1月27日付け「求釈明書(3)」の回答について」を、同3日に受領した(以下、「当該回答書」という)。
しかし、回答にはいまだ不明な点が多く、また、そもそも回答自体が記されていない事項が多々含まれており、当団体としては、これをもって貴女からの請求に対して不備なく適正に報告を行なうことは、今なお不可能であるといわざるを得ない。
当団体では、その後さらに、貴女より2011年2月9日付「足立区反社会的団体の規制に関する条例に基づく報告書の提出について(催告)」を受領し、報告期限(1月30日)を過ぎても報告書が提出されていないとして、罰則(過料処分)の適用の警告を含めた催告を受けた。
しかしながら、そもそも貴女にあっては、2010年12月28日付「足立区反社会的団体の規制に関する条例に基づく報告書の提出について」において、名宛人を誤って本件請求通知を行ない、当団体からの指摘を受けて(2011年1月7日付「要請並びに求釈明書」)、初めてその不備に気づき、その後当初の請求日から遅れること17日(報告期限の14日前)で、ようやく名宛人を書き換えて正式に請求通知を行なうに至ったものである(2011年1月14日付「2011年1月7日付「要請並びに求釈明書」の回答について」並びに同日付「足立区反社会的団体の規制に関する条例に基づく報告書の提出について」)。さらに、報告書作成のために確認が必要な事項について、当団体ではその後も2度にわたって貴女への求釈明を行なったものの(2011年1月17日付「再求釈明書」並びに同27日付「求釈明書(3)」)、前者については1週間を経たのちも何ら回答がなく、当団体より電話にて直接照会を行なって、はじめて貴区担当者より「回答しない」旨の回答があった(1月25日)。また、この電話確認の後ただちに貴女宛に送達した後者については、すでに報告期限を超過した2011年2月1日付でようやく「2011年1月27日付「求釈明書(3)」の回答について」が当団体宛に送付されてきたところである(ただし、配達記録によれば、投函されたのは文書記載の「2月1日」ではなく2月2日であり、当団体に到達したのは、上記のとおり翌3日である。貴女によるこれ以前の文書については、文書記載の日付と投函日付は同一であった)。
このとおり、本件請求に対して不備なく適正に報告を行なうには、貴女の回答・対応はあまりに不十分であって、当初の名宛人の誤記以来、本件手続の遅滞と混乱は貴女が招来しているものといわざるを得ない。
新聞報道によれば、貴区は、いまだ当団体からの「回答はない」と発表しているとされるが(2011年2月11日付毎日新聞及び東京新聞)、上記のとおり、当団体では既に3度にわたって、本件請求に基づく報告を行なうための求釈明書を送達しているのであって、これに対して報告期限までに適正な回答を示さなかったのは、むしろ貴区の側なのである。
そこで、当団体としては、以下のとおり改めて求釈明を行なう(1〜16)。貴女においては、ただ催告を行なうのではなく、請求者としての説明責任を果たすことにこそ意を砕かれたい。
なお、当団体からの2011年1月27日付「求釈明書(3)」において、「(3)本条例6条2項について」とあるところ、貴女の指摘どおり、同条2項は存在せず、これは「本条例6条」の誤記であるので、ここに訂正する。
記
1.当該回答書において、「(1)「団体」について」に「観察処分を受けている団体」とあるところ、「足立区反社会的団体の規制に関する条例」(以下、「本条例」という。)には、「この条例において「反社会的団体」とは、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年法律第147号)第5条第1項に規定する観察処分を受けた団体をいう。」(本条例3条)と規定されており、両者には重大な相違が見られる。
本条例が対象とするのは、@「観察処分を受けた団体」であるのか、それともA「観察処分を受けている団体」であるのか、かかる仕方で二通りに書き分けた理由を含めて明らかにされたい【求釈明1】。
本条例3条にいうとおり、前者を指すとするならば、今後、観察処分が取り消された場合、「(かつて)観察処分を受けた団体」と本条例の対象団体との同一性をどのような基準及び手続のもとで判断するのか、明らかにされたい【求釈明2】。上記文書にあるとおり、後者を指すとするならば、観察処分が取り消された場合には、本条例の対象とされないと解されるのか否か、明らかにされたい【求釈明3】。
また、同じく「(1)「団体」について」にいう「観察処分を受けている団体」の「団体」とは、団体規制法に基づく観察処分の被処分団体すなわち「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することを目的とし、同人が主宰し、同人及び同教義に従う者によって構成される団体」を指すのか、それとも、貴区による規定すなわち「団体規制法で観察処分を受けた団体とは、『Aleph(アレフ)』『ひかりの輪』の2団体」との規定に基づき、「Aleph」ないし「ひかりの輪」を指すのか、明らかにされたい【求釈明4】。
もし、前者である場合、当該観察処分の被処分団体と当団体とが、本件請求の上でどのような関係にあるのか、これらの対応関係ないし当該被処分団体における当団体の位置づけを含めて明らかにされたい【求釈明5】。また、観察処分の被処分団体の代表者とされる「麻原彰晃こと松本智津夫」と、本件請求の名宛人であり当団体の代表者たる「運営委員会共同幹事」とが、本件請求の上でどのような関係にあり、当該「運営委員会共同幹事」が当該被処分団体の中でどのように位置づけられ、そのいかなる地位ないし資格に基づき、本件請求の名宛人とされているのかについて、それぞれ本条例に即して明らかにされたい【求釈明6】。
もし、後者である場合、貴区が依拠していると思料される公安調査庁による国会報告資料「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の施行状況に関する報告(平成21年1月1日から同年12月31日まで)」においては、観察処分の被処分団体の「組織の概況」として、「『Aleph』の名称を用いる集団」と「『ひかりの輪』の名称を用いる集団」を「中心として」いるとされているところ、貴区がいう「(観察処分を受けている)団体」とは、公安調査庁が規定するところの「集団」と同一のものを指しているのか否か、明らかにされたい【求釈明7】。同一である場合、貴区が公安調査庁の規定する「集団」の語を用いることなくあえて「団体」と称する理由を明らかにされたい【求釈明8】。もし異なる場合は、貴区による「(観察処分を受けている)団体」の定義について、「集団」との差異を含めて明らかにされたい【求釈明9】。
なお、本項の求釈明(1〜9)については、当初の求釈明(2011年1月7日付「要請並びに求釈明書」)以来、貴女に対して質問し続けてきた事項でもあるところ、これに対して貴女はいまだ十分な回答を行なっていない。
当団体が、なお求釈明を続けているのは、貴女が「観察処分を受けている団体に報告義務があり、その団体の範囲で報告を求める。」という場合の「団体」が、団体規制法に基づく観察処分の被処分団体すなわち「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することを目的とし、同人が主宰し、同人及び同教義に従う者によって構成される団体」を指すのか、それとも、貴区による規定すなわち「団体規制法で観察処分を受けた団体とは、『Aleph(アレフ)』『ひかりの輪』の2団体」との規定に基づき、「Aleph」ないし「ひかりの輪」を指すのか、両者のいずれであるかによって、「構成員」をはじめとする報告の基準及び範囲が異なってくるからにほかならず、この点が明らかにならない限り、報告を行なうこと自体不可能だからである。貴女においては、かかる事情を踏まえて、遺漏無く釈明されたい。
2.当該回答書において、「(2)本条例5条2項について」に「観察処分を受けている団体であるので、活動内容及び活動予定を知る必要があるので該当する。」とあるところ、ここでは、当団体の当該求釈明の前段(「本条例5条2項に「反社会的団体は、区の区域内において活動し、又はその構成員を居住させようとするとき」とあるが、「させようとするとき」とは、いかなる態様を表すのか、明らかにされたい。」)について全く触れられていない。
「反社会的団体」の報告義務を規定した本条例5条2項は、観察処分を受けている「反社会的団体」に対して無条件に報告義務を課すものではなく、あくまでも所定の条件すなわち「区の区域内において活動し、又はその構成員を居住させようとするとき」という条件に該当する限りにおいて、「次に掲げる事項(5条2項各号)を定期的に区長に報告しなければならない。」と定めている。
当該求釈明の前段は、ここでの条件性について詳しく説明を求めたものであるところ、上記のとおり、貴女はこれに対して直接的には何も答えずに、「観察処分を受けている団体であるので、活動内容及び活動予定を知る必要があるので該当する。」として、観察処分を受けている団体であれば無条件にその「活動内容及び活動予定」を報告する義務を負うとの見解を明らかにしている。これは本条例5条2項の規定に明らかに反するものである。
当該条文は、その文理上、「反社会的団体」が区の区域内において「@活動し(ようとするとき)、」又は「Aその構成員を居住させようとするとき」という二つの態様にある場合を取り上げ、これに該当するときに所定の報告を義務づけているものと解すほかない。
そして、ここでいう、「「反社会的団体」が区の区域内において「@活動し(ようとするとき)、」又は「Aその構成員を居住させようとするとき」」とは、いわば、団体の活動ないしその構成員の居住が、(「準備」を含めて)「未遂」的な状態にある場合をいうのであり、既に団体の活動ないしその構成員の居住が現に行なわれている状態とは、明確に区別されるべきものである。
ちなみに、本条例が依拠する団体規制法においても、「再発防止処分」の一要件として、「当該団体の役職員又は構成員が、団体の活動として、人を殺害し若しくは殺害しようとしているとき」(8条1項1号前段)を定めている。そして、ここにいう「しようとしているとき」とは、同法の解説書(治安制度研究会編著「オウム真理教の実態と「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」の解説」立花書房)によれば、「一定の行為の準備行為を行っているときと、未だその結果は発生していないが、既に一定の行為の実行を始めているときの双方を含む概念である。例えば、人を殺害する目的で、そのための凶器や毒薬を準備している場合は、「人を殺害しようとしているとき」に該当する。」として、「殺害し」と「殺害しようとしているとき」を明確に区別している。
貴女においては、本条例5条2項に即して、「反社会的団体」が報告義務を課される条件について明らかにするとともに、同様に、「(活動)しようとするとき」並びに「(居住)させようとするとき」が表す態様について、それぞれ明らかにされたい【求釈明10】。
3.当該回答書において、「(3)本条例6条2項について」に「報告内容の公表については、区の基準で判断する。」とあるところ、本条例がその前提に置く団体規制法を所管する公安調査庁は、観察処分の実施等を通じて得られた、同処分の対象団体の施設の所在について、その開示を認めていないことは、当団体からの2011年1月27日付「求釈明書(3)」で指摘したとおりである。
すなわち、団体規制法がその目的として「国民の生活の平穏を含む公共の安全の確保に寄与することを目的とする。」(団体規制法1条)と規定しているところ、公安調査庁においては、「当該団体を他からの観察・監視にさらす」ことや、「誹謗・中傷や暴力的干渉等を引き起こすなど、当該団体の権利その他正当な利益を害するおそれ」及び「場合によっては犯罪行為を誘発するなどして公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ」があることを理由に、観察処分の対象団体の施設の所在を開示していない。
他方において、団体規制法とその趣旨を同じくする本条例(「区民の安全及び地域の平穏の確保を図ることを目的とする。」本条例1条)において、公安調査庁が上記のような理由により開示を認めてない情報をあえて公表をするというのは、いかなる理由によるものか。当団体としては、貴区のインターネット上のウェブサイトを通じ、いわば世界のどこからでもアクセスし得るかたちで公表されることを前提として、本条例の趣旨にも反する不測の事態を引き起こすおそれのある事項を報告することにつき、重大な懸念を有している。
貴女においては、これらを踏まえ、本条例6条で、本条例施行規則2条3項2号に規定された「区内における団体の活動の用に供されている土地及び建物の所在、地積又は規模及び用途」に関する当該団体からの報告を公表するとしている、その目的を明らかにされたい【求釈明11】。
4.当該回答書において、「(4)本条例施行規則2条3項1号について」に「事業計画、活動計画は例示であり、活動全般が対象である。」とあるところ、ここには、当団体の当該求釈明の後段(「本条例における「事業(計画)」及び「活動(計画)」の定義をそれぞれ明らかにされたい。」)への回答が含まれていない。定義が明らかでない例示がいくら提示されても、正確な報告を行なうことは不可能である。
また、同じく「(5)本条例施行規則2条3項3号について」についても、当団体が釈明を求める本条例における用語の定義(「拠点」「活動」及び「整備(計画)」)が明らかにされていない上、「本条例施行規則2条3項1号」記載の事項と「本条例施行規則2条3項3号」記載の事項との関係ないし差異等についても回答がない。
そもそもこれらの用語に限らず、本条例5条2号1号にいう「役職員」「構成員」の定義等も明らかにされていない。
ちなみに、本条例が依拠する団体規制法に基づく観察処分が実施された際には(2000年2月)、公安調査庁は、同法5条2項に基づいて被処分団体から報告を徴するに当たって、被処分団体に対して「報告事項記載要領」を書面で交付し、報告書を作成する上で必要な用語の定義並びに例示を含めた記載の要領等を明らかにし、口頭説明も含めた指導を行なった。
当団体としては、改めて、本条例が規定する報告事項に関し、報告書作成の上で必要な下記用語の定義並びに例示を含めた記載の要領につき、本条例所定の文書を交付するなどして明らかにするよう要請する【求釈明12】。
(1)役職員(条例5条2項1号、規則3条2項)
(2)役職名(同上)
(3)構成員(同上)
(4)(役職員並びに構成員の)住所(条例5条2項1号)
(5)活動及び活動計画(条例5条2項1号、報告書式の2)
(6)団体の意思決定(規則2条3項1号)
(7)支部(同上)
(8)分会(同上)
(9)下部組織(同上)
(10)団体の活動の用に供されている土地(規則2条3項2号)
(11)団体の活動の用に供されている土地の所在(同上)
(12)団体の活動の用に供されている土地の地積又は規模(同上)
(13)団体の活動の用に供されている土地の用途(同上)
(14)団体の活動の用に供されている建物(同上)
(15)団体の活動の用に供されている建物の所在(同上)
(16)団体の活動の用に供されている建物の地積又は規模(同上)
(17)団体の活動の用に供されている建物の用途(同上)
(18)土地又は建物に係る権利(規則2条3項3号)
(19)土地又は建物に係る権利の取得(同上)
(20)土地・建物の取得計画(報告書式の4)
(21)拠点(規則2条3項3号)
(22)居住する場所(同上)
(23)整備及び整備計画(同上)
(24)事業及び事業計画(報告書式の2)
併せて、その他未回答の求釈明事項(「本条例施行規則2条3項1号」記載の事項と「本条例施行規則2条3項3号」記載の事項との関係ないし差異及び「本条例施行規則2条3項3号」にいう「当該団体の構成員が拠点として活動し、又は居住する場所」と「本条例3条2項」にいう「反社会的団体」の「活動の拠点又は反社会的団体の構成員若しくは関係者」の「住所地」との関係)についても、それぞれ明らかにされたい【求釈明13、14】。
また、当該回答書の「(5)本条例施行規則2条3項3号について」には、「関係者は反社会的団体に関わる者である。」とあるところ、当団体が求めた「関係者」の定義として、あまりにも不十分といわざるを得ない。「関わる」とは、単に「関係する。たずさわる。」(広辞苑)を意味するに過ぎず、これではほとんど限定がないに等しい。例えば、ほかならぬ貴女さえも、本条例の公布をはじめとする諸手続を通じて「反社会的団体に関わる者」すなわち「関係者」だといい得てしまう。
本条例が、「この条例の規定は、区民の安全及び地域の平穏の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあってはならない。」(2条1項)、「この条例に基づく規制は、前条に規定する目的を達成するために必要な最小限度において行うべきであって、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならない。」(同2項)とうたうものであるにかかわらず、このような無限定に等しい定義を法定することは、到底許されるべきことではない。
したがって、「関係者」の定義について、改めて貴女に対して釈明を求める【求釈明15】。
5.貴女からの2011年1月7日付「足立区反社会的団体の規制に関する条例に基づく報告書の提出について」に添付された「足立区反社会的団体に関する条例 第2条 報告書式(参考)」にいう「足立区反社会的団体に関する条例 第2条」とは何を指すものか、明らかにされたい【求釈明16】。
以上