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長官銃撃国賠訴訟

裁判日程

訴状

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名誉毀損による損害賠償等請求事件

原  告   Aleph
被  告   東京都 ほか1名
(別紙当事者目録記載のとおり)


訴    状

  2011年5月12日

東京地方裁判所  御中

  訴訟物の価額   5000万円
  貼用印紙額   17万円
  添付書類   訴訟委任状              1通
           原告の宗教理念(綱領)        1通
           原告のコンプライアンス規程(綱領)  1通
           原告の運営規則(規約)        1通
証拠方法   後記のとおり

 

 

第1 請求の趣旨
 1 被告らは原告に対し、各自5000万円およびこれに対する2010年3月30日から支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
 2 被告らは、下記の謝罪文を原告に交付するとともに、警視庁本部正玄関および副玄関の見やすい場所に、縦1.5m、横1mの白紙に墨書した同謝罪文を、判決言渡しから1ヶ月間掲示しなければならない。
 3 訴訟費用は被告らの負担とする。
  との判決ならびに第1項につき仮執行宣言を求める。

 

謝 罪 文

  いわゆる「警察庁長官狙撃事件」について、2010年3月30日私たちが公表した「冒頭発言」および「警察庁長官狙撃事件の捜査結果概要」は、今般東京地方裁判所において、Alephの名誉を毀損する違法な内容であるとの判断が示されました。よって私たちはAlephに深謝するとともに、二度とこのような違法行為を行わないことを固く誓約いたします。

2011年  月  日

東京都知事    石 原 慎太郎
警視総監     池 田 克 彦


 
第2 請求の原因
  1 事案の概要
  本件は、いわゆる「警察庁長官狙撃事件」(以下「狙撃事件」)が、2010年3月30日に公訴時効が成立し、刑事事件の立件が法的に不可能となったにもかかわらず、時効完成の当日、あたかも「狙撃事件」が原告の行為であるかの如き「冒頭発言」および「警察庁長官狙撃事件の捜査結果概要」なる文書を公表し、もって原告の名誉を回復し難く毀損し、かつ刑法および刑事訴訟法の基本原則ひいては憲法上の言論、表現、結社の自由という精神的自由権を蹂躙したことに対して、その責任者たる東京都(知事)および、池田克彦(当時の警視総監)に損害賠償および謝罪文の交付と掲示を求める事案である。
 
  2 当事者
  (1) 原告
  原告は、宗教法人オウム真理教が宗教法人法に基づく裁判所の解散命令によって解散した後、 信者により結成された宗教団体オウム真理教の組織を改編して、2000年2月4日に綱領・規約を採択して「宗教団体・アレフ」として発足した団体であり、 2008年5月20日に名称を「Aleph」と改め、従来の綱領・規約を改正して、宗教理念・運営規則・コンプライアンス規程を定めた。
  (2) 被告ら
  @ 被告東京都
  被告東京都は、警視庁を設置し、管理し運営する地方公共団体である。
  A 被告池田克彦
  被告池田克彦は、本件不法行為の当時警視総監の官職にあり、現在もその職にある者で、本件不法行為を決断し、指示し、実行した最高責任者である。


 3 記者会見・ホームページ掲載・新聞記事・・・名誉毀損による不法行為
  (1) 警視庁公安部長は、2010年3月30日、1995年3月30日に発生した警察庁長官狙撃殺人未遂事件につき、「オウム真理教が、今なお、法に基づき、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が認められる団体として観察処分を受けていることなどにかんがみ」(甲1)とし、「この事件は、オウム真理教の信者グループが、教祖の意思の下に、組織的・計画的に敢行したテロであった」として同日付警視庁作成名義の「警察庁長官狙撃事件の捜査結果概要」(甲2。以下「概要」と略す)を公表し、かつ、同じものを同月31日から30日間、警視庁ホームページに掲載した。
  (2) 被告 池田は、監督責任上これを制する立場にありながら、警視総監として上記「概要」の公表およびホームページ掲載を許可した。
(3) 別紙記載の各紙は、同日付ないし翌日付の紙面で上記(1) の記者会見や「概要」の内容を各新聞記事として掲載した。

 

 4 社説の論評など・・・名誉毀損の不法行為性
  (1) 上記3(1) の「概要」の公表につき、各紙は「容疑者不詳のまま起訴に至らず時効が成立した事件で、捜査機関が犯罪への特定の団体の関与を断じるのは聞いたことがない」(3月31日付朝日新聞)、「具体的な証拠がなく、事件として立件できなかったにもかかわらず、特定の個人や団体を犯人と断定して警察が一方的に公表する―。にわかには信じ難いことだ」、「これはいくら何でもひどすぎる」(4月1日付北海道新聞)などと論評した。
  (2) 当の被害者である国松元長官は、「逮捕できる証拠がないのに発表して、一般の人がどのように思うか心配だ」、「結果としては教団の犯行と言えないだろう」とコメントした(3月31日付読売新聞)。
  (3) 日本弁護士連合会は、同年4月27日、会長声明を発し、「…本件は、公訴時効の成立までに被疑者を送検できなかった事件である。このような事件について、捜査機関が、裁判を経ずして一方的に具体的な事件に関する事実を認定すること、ある人物や団体を犯人として特定して、これを公表することは、憲法31条及び『無罪の推定』の原則に明らかに反する。しかも、公表するか否かを、捜査機関が事件によって恣意的に決めることは、認められるべきではない」として、直ちに上記3(1) のホームページ上の公表を中止するよう強く求めた。
  (4) 上記(1)、(2)、(3)は、上記3(1) による名誉毀損としての不法行為の悪質さを示している。

 

 5 原告の損害
  (1) 原告は、上記2(1)のとおり宗教理念・運営規則・コンプライアンス規程を定め、原告構成員に対して法令遵守を義務づけるとともに、仏教・ヨーガ本来の教えを根本とした健全な宗教活動を行うこと、一連のオウム真理教事件の被害者に対して誠意ある対応を行うことを誓い、現にそのように努めてきたが、「今なお、法に基づき、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性が認められる団体として観察処分を受け」、 これに対する処分取消請求訴訟を提起しているところ、上記3(1) による記者会見、「概要」の公表が、同(3) のとおり、広く報道されることによって原告の名誉、原告のイメージおよび信用が著しく毀損され、これによって原告は甚大な無形的損害を被った。この損害は金銭評価は困難であるが、敢えて金銭評価すると、少なくとも金5000万円を下らない。
  (2) 上記3により原告に生じた名誉毀損・信用毀損は極めて深刻であり、金銭補償だけでは到底慰謝できるものではないので、原状回復措置として謝罪文の交付と掲示が必要不可欠である。

 

 6 参考
  参考として事件関係年表を掲記しておく。オウム真理教元信者K元巡査長とは別人の、「狙撃事件」を「自白」したとされる中村泰に対する警視庁捜査一課などによる捜査の経過も入れた。

 

 7 まとめ
  よって、原告は被告らに対し、国家賠償法および民法709条に基づき、請求の趣旨記載のとおり、慰謝料5000万円およびこれに対する不法行為日たる2010年3月30日から支払済みに至るまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払いおよび謝罪文の交付および掲示を求める。

第3 証拠方法
    甲1 「冒頭発言」
    甲2 「警察庁長官狙撃事件の捜査結果概要」

 

 

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