公安調査庁は、どうも「教団信者が増えている」と思わせるための印象操作をあえて行なっている節があります。その一つが、「新規入信者」に関する発表です。
 特に、最近のマスコミ報道でもしばしば引用されるのが、「2012年の新規入信者数は、2000年以降最多の255人」というもの。
 今年1月に放送されたテレビ東京の「オウム・平田信 初公判特別番組」でも、公安調査庁発のこのデータが取り上げられました。

大橋未歩アナウンサー「実はこちらに衝撃的な数字があるんです。平田信被告、菊地直子被告、高橋克也被告が逮捕された2012年にAlephに入信した人の数は200人を超えているんです。これは2000年以降で過去最多となりました。平田被告たちが逮捕されてオウム事件が再びクローズアップされたその年に、もっとも多くの人がオウムの後継団体に入信したこの現実をわたしたちはどう受け止めればよいのでしょうか。」

大浜平太郎キャスター「本来は減るんじゃないかという期待もあったんですが、逆に増えているんですね。」

 報道番組のメインキャスターが、「入信者が減るんじゃないかという期待もあった」とまで言い切ったことには正直驚きました。番組の進行役として、少なくとも立場上は公正中立に振る舞うべき人物に、まるでワイドショーのコメンテーターのような「期待」を口にさせるほど、このニュースはセンセーショナルに扱われがちです。
 この数字はおそらく、Alephが、教団に所属する会員について定期報告(2月、5月、8月、11月の年4回)している資料を公安調査庁がその都度つき合わせ、新規分を合計して発表しているのでしょう(ごく単純な、引き算と足し算です)。
 しかし、ここにまやかしがあるのです。

 うっかりすると見過ごしがちですが、ここでいわれているのは、あくまでも「新規入信者」の数であって、教団全体の「会員総数」ではありません。
 宗教団体であれ何であれ、新規に組織に入ってくる人がいれば、逆に離れていく人もいます。 新しく入ってきた人の分だけ組織がどんどん膨張していくわけではなく、入会者がいれば当然退会者もいるのが常です。特に、地域単位や家族単位で伝統宗教に帰属する諸外国と異なって、多くの宗教が入り乱れ並び立つ日本では、宗教団体を渡り歩くいわゆる“宗教遍歴”を重ねる人が少なくありません。新宗教、新々宗教と称される宗教団体にはこのような傾向がより顕著です。
 ですから、実際に会員数が全体として増えているのかどうかについては、入会者数から退会者数を差し引かなければ、実際のところはわかりません。差し引きがプラスであれば、その分会員は増えたことになりますし、逆にマイナスであれば、その分会員は減ったことになります。つまるところ、「新規入信者」の数が、教団の規模や実状を正確に反映しているわけではないのです。

 これを商売にたとえると、わかりやすいかもしれません。つまり、あるお店で売れた商品の売り上げだけを合計してそれを利益だと錯覚させているようなものなのです。商品を店頭で販売するためには、当然、それまでに仕入れ原価やその他の諸経費が掛かっているわけですから、これらを差し引かずに単に売り上げの数字だけを見ても、ほとんど意味が ないことはいうまでもありません。
 もう十数年も前のことですが、公安調査庁が、「教団関連のパソコンショップの年間の売り上げが60億円」と喧伝していたことがありました。そのときはまさに、薄利多売の事業の「売り上げ」だけを取り上げることで経済力を目一杯大きく見せ、それによって教団の危険性を煽っていたわけです(最近は公安調査庁も少し手が込んできて、たとえば「流動資産」という、一般には馴染みのない会計上の数字を持ち出してきて、“潤沢”な教団イメージの形成に寄与しています)。

 信者数にしても資産にしても、これらを豊かな想像力で過大に印象づけるための公安調査庁の数字のトリック、あるいは言葉のレトリックが使われており、それがマスコミに流通していることは指摘しておきたいと思います。