前回の記事(「増える信者数」の謎謎)で、公安調査庁が「教団信者が増えている」と思わせるために行なっている印象操作として、「入信者」のからくりを取り上げました。今回は、「退会者」のからくりの話です。
 
 公安調査庁は、新規入信者数の発表とは別に、「観察処分の『被処分団体』の構成員数」の発表を行なっています。
 実は、一般には全くといっていいほど知られていないことですが、団体規制法に基づく観察処分の対象となっている団体、すなわち『被処分団体』は、正式には、
 
 『麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することを目的とし、同人が主宰し、同人及び同教義に従う者によって構成される団体』
 
と称されています。観察処分の決定書にはしっかりとこの名称が記載されています。Alephに送られてくる書面も、封書いっぱいにこの長大な団体名が記されています。

公安調査庁からの封書

 ところが、この団体名が正確にマスコミで報道されたことは、実はこれまで皆無です。報道では、対象団体を漠然と「オウム真理教」、あるいは「Alephとひかりの輪」などと表現されるのが通例となっています。しかしこれは正しくないのです(詳しくは、「だれも知らない観察処分の対象『団体』 」を参照してください)。
 そして、この『団体』には、
 
  ①「Aleph」という集団名を称して活動している構成員
  ②「ひかりの輪」という集団名を称して活動している構成員
  ③その他の構成員
 
という3タイプの構成員が存在しているとされています。
 ①と②は、それぞれAlephとひかりの輪の会員のことを指しています。
 わかりにくいのが「③その他の構成員」です。これは、「オウム真理教」「Aleph」「ひかりの輪」からの退会者のうち、公安調査庁が「本当は辞めていない。実際は団体構成員である」と認定をした人たちのことを指します。観察処分取消訴訟で、国が裁判所に提出した書面から定義を引用するならば、③とは、
 
「かつて『アレフ』、『アーレフ』の名称を使用して活動していた集団に明示的に加入していた構成員らで、現在は、原告(※Aleph)や『ひかりの輪』とは一定の距離を置いて活動している者ら」
 
のことです。
 長くなりましたが、以上が前置きです。
 さて、これら3タイプのメンバーで構成される観察処分の「被処分団体」について、2013年、公安調査庁は、その構成員が150人増加したと発表しました。3タイプのうち、どれが増えたのでしょうか。
 
 前々回の記事(「増える信者数」の謎)にも書いたとおり、2013年、Alephの会員数(上記の①)は微減しており、その傾向は現在も続いています。

【11月時点の比較】
 ・2012年 1216名
 ・2013年 1197名

【2月時点の比較】
 ・2013年 1214名
 ・2014年 1196名
 
 一方ひかりの輪(上記の②)は、公安調査庁の発表によれば、2013年は「約200人で横ばい」とされています。
 ということは、2013年に「150人増加した」のは、Alephやひかりの輪の会員(上記の①②)ではなく、公安調査庁が「観察処分の対象者」として新たにリストアップされた退会者たち(上記の③)だったことになります。
 
 前回の記事(「増える信者数」の謎謎)では、新しい「入信者」によってAlephの会員が増えているかのように思わせる印象操作のからくりを解説しました。公安調査庁は、そのからくり仕掛けで人目を惹き付けながら、その裏で、過去の「退会者」の数字をこのように操作して、こっそり上積みをしていたのです。
 つまり、「増加した構成員150人の内訳は、新しい『入信者』ではなく過去の『退会者』である」という、実に奇怪な話だったという訳です。
 記事タイトルの「謎」はどんどん増えていますが、だんだん謎が解けてきたようです。