それでは、ここで団体論から少し離れて、そもそも観察処分とは一体何なのか、ということについて見てみましょう。
 「観察処分」とは、団体規制法に規定されている処分の一つです。観察処分が適用される条件は、

 1.団体の活動として無差別大量殺人行為を行なった団体で、
 2.以下に示す5つの要件のいずれかに該当し、
 3.団体の活動状況を継続して明らかにする必要があると見なされた場合

です。ここでいう5つの要件とは、

(1)無差別大量殺人行為の首謀者が現在も団体の活動に影響力を有す
(2)その行為に関与した者が現在も団体の構成員である
(3)その行為が行われた当時の団体の役員が現在も役員である
(4)殺人を明示的又は暗示的に勧める綱領を保持している
(5)その他無差別大量殺人行為に及ぶ危険性がある

です。
 この法律を本件に当てはめると、「無差別大量殺人行為」とは、地下鉄サリン事件と松本サリン事件を指します。「首謀者」とは、麻原彰晃こと松本智津夫、すなわち麻原尊師とされています。

 手続きとしては、まず公安調査庁(略して「公調」)が無差別大量殺人行為を行なった「団体」を特定して、その「団体」への観察処分を公安審査委員会(同じく「公安審」)に請求します。その後、公調の請求に基づいて公安審が審査を行ない、そこで請求を認める決定が下されれば、公調によって観察処分が実施されることになります。処分を受けた団体には、団体活動について公安調査庁長官に報告する義務と、公安調査官及び警察官による立入検査に応じる義務が課せられます。

 人権侵害の度合いの強い観察処分は、本来3年を超えない期間に限定された処分ですが、処分は「更新」をすることが可能です。公調が処分の更新を請求する際も、基本的には、上記と同様の要件に基づいて、同様の手続きで審査されます。現在、Alephなどに行なわれている観察処分は、2000年に決定された3年間の観察処分(原決定)が、2003年、2006年、2009年、2012年、2015年の5回にわたって3年ごとに更新を重ねてきたものです。

 今回、2017年11月に公調が公安審に対して行なった更新請求では、

 ①麻原尊師が現在も団体の活動に絶対的な影響力を有している
 ②麻原尊師と、両サリン事件に関与した3名が現在も団体の構成員である
 ③麻原尊師が現在も団体の代表者であり、ひかりの輪代表である上祐史浩氏が現在も団体の役員である
 ④殺人を正当化する「タントラ・ヴァジラヤーナ」の教義を綱領としている
 ⑤一般社会と隔絶した独自の閉鎖社会を構築している等

などが、請求の理由として挙げられました。
 しかし、これらの理由はいずれも全く不当なものです。
 一つずつ見ていきましょう。【続く】