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観察処分更新取消訴訟 第1回口頭弁論 意見陳述

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2009年9月24日

東京地方裁判所 御 中

                       Aleph
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意見陳述書

 この団体規制法・観察処分の目的は、法律の規定では無差別大量殺人行為の再発を防止することであるとされています。観察処分の対象団体が過去に行ったとされる無差別大量殺人行為は、麻原開祖を独裁者とする祭政一致の専制国家を樹立することを目的として、麻原開祖の独自の教義に則って、麻原開祖によってしかなし得ない殺人の指示に従って引き起こされた、とされています。
  つまり、対象団体による無差別大量殺人行為は、その目的も原因も、ともにすべて麻原開祖にこそ存在している、というのが観察処分の大前提になっています。それは公安審査委員会が決定文の中で「麻原開祖とその教義が被処分団体の存立の基盤をなしている」と端的に表現している通りです。

 前回の観察処分更新から今回の更新決定に至るまでの期間は、この「存立の基盤」に重大な変化が生じていることが明らかになった3年間でした。控訴審において、多数の精神科医が麻原開祖の精神鑑定を行ったところ、その訴訟能力に強い疑問が持たれたのです。
  これに対して東京高裁は、麻原開祖に訴訟能力はあるとして、2006年9月、死刑判決が確定しましたが、しかし、裁判所のいう訴訟能力とは生活能力程度のものに過ぎず、麻原開祖の精神活動が著しく低下しているという事実は、裁判所も否定できなかったのです。

 であるにもかかわらず、2006年から3年間の調査を経て、昨年公安調査庁が行った更新請求は、現在の麻原開祖についてひと言も語っていません。99年の原処分の請求時と同様、ただサリン事件以前の説法の引用に終始しています。それ以外には、唯一、10年前の法廷でのいわゆる不規則発言が「最新」の証拠として引用されているのみです。その他の膨大な証拠の大半は、麻原開祖と今や何の接触もない、Alephやひかりの輪の活動を事細かに報告するばかりでした。

 これは、観察処分の大前提、つまり、「無差別大量殺人行為の目的も原因も、すべて麻原開祖に存在している」とする自らの論理の否定にほかなりません。また、現在の麻原開祖に目を向けることなく、過去の証拠にのみ基づいて漫然と更新を行った公安審査委員会の決定も、この点において破綻していると言わざるをえません。

 これまで観察処分に基づいて、延べ総数5000人以上の調査官を動員して、延べ428カ所、187回にわたる立入検査が行われてきました。しかし、無差別大量殺人行為に結びつくような証拠はどこからも見つかっていません。6年前、独裁国家の大量破壊兵器疑惑を理由に強行された戦争は、その疑惑に根拠がなかったことが明らかになった今、その正当性が問い直されています。これと同様に、今必要なことは、「はじめに結論ありき」で強行された立法過程を含めて、観察処分の10年間を冷静に検証することです。

 一方で、今回の更新決定は、Alephにもひかりの輪にも所属しない、数百名にも上る過去の退会者が、麻原開祖が獄中から主宰しているという「団体」の構成員として、今なお公安調査庁の監視下に置かれている現状を浮き彫りにしました。つまり、Alephとひかりの輪、そして退会者数百名を含む、いわば観念上の団体が観察処分の対象とされているのです。これによって、この法律でいう「団体」の概念が、およそ特定性を欠いた恣意的なものに変質していることが、より明らかになりました。「対象はオウムだけ」という、立法当時に喧伝された正当化さえも、今や完全に崩れているのです。

 「団体規制」の名のもとに、個人の内心、個人の信仰、個人と個人のつながりに監視の目を光らせ、たとえ教団を離脱してもどこまでも追いかけていくというのが、今回あらわになったこの法律の本質です。法律の条文でいくら濫用禁止をうたったとしても、現実の団体規制の現場では、拡張解釈を自制することは、現実で起きていることを見る限り、全く不可能なのです。この点を取ってみても、団体規制法は、際限のない人権侵害をもたらす憲法違反の法律にほかなりません。

 現行憲法のもとで初めて実行された団体規制の危険性があらわになった今、その濫用に歯止めをかけておかなければ、やがてその矛先は、必ずや、形を変えて市民社会に向かっていくことでしょう。過去の治安維持法の歴史はそのことを物語っています。
  法の番人である裁判所には、抜き身となった危険な矛を鞘に納めさせるために、速やかに本処分を取り消していただけるよう、どうかよろしくお願いいたします。

以  上

 

 

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