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団体規制法/観察処分

足立区団体規制条例

長官銃撃国賠訴訟

裁判日程

参考:第146回衆議院法務委員会(1999年11月09日)

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○臼井法務大臣 立ち入りをした際には強制的に調査というものができない仕組みになっておりまして、したがいまして、帳簿等を嫌がるものを無理にあけさせたり、あるいはコピーをとるのを拒否するのを無理にとらせたり、そういう行為はできないわけでございます。
 写真につきましては、合理的な必要な範囲でもって撮ることは差し支えない、このように理解いたしております。

○質問者 今、帳簿を無理に出させたりすることはできないとおっしゃいましたが、例えば、帳簿を見せてもらいたい、嫌だ、こうなったら帳簿は見れないのでしょうか。

○臼井法務大臣 相手側で、もしどうしてもその帳簿を見せたくないということで拒否があった場合には、これは見れないということであります。

○質問者 八条の第一項の七号になるのでしょうか、再発防止処分について、「構成員の総数又は土地、建物、設備その他資産を急激に増加させ又は増加させようとしているとき。」これは一つの再発防止処分の要件になっているわけですね。こういう点を調べるために帳簿を見なきゃならぬ場合もあると思うのですね。帳簿を見れば有力な証拠になるわけですね。その際にも、そういう疑いがある場合でも、帳簿は任意でなければ見れないということになるのでしょうか。

○臼井法務大臣 この場合は、残念ながら、相手が拒否した場合には見ることはできない。そのかわり、その拒否に対して罰則を設けている次第であります。

○質問者 帳簿閲覧の拒否についての罰則というのはあるでしょうか。

○臼井法務大臣 当然、そのものに対して拒否した場合には罰則を受けるということはうたわれております。

○質問者 これで言うと何条になるんでしょうか。

○臼井法務大臣 三十八条、「立入り又は検査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」こういうことになっております。

○質問者 この「検査を拒み」になるんでしょうかね。この検査の中には、そうするとやはり帳簿閲覧受忍義務みたいなものがあって初めてこれは罰則の対象になるんじゃないんでしょうか。何も帳簿を見せる義務がないのに罰則があるというのもおかしいんであって、罰則があるということは、帳簿の提示あるいは名簿の提示を求められた場合に、それを見せなきゃならぬという義務があるからこそ罰則になっているんじゃないんでしょうか。どうでしょうか。

○臼井法務大臣 この立ち入りそのものは、行政的な処分を行うための調査ということでございます。したがいまして、特定の犯罪を立証しようとする立ち入りとは異なりまして、そうした相手の拒否に対して強制的に私どもの方からあえてそれを行うということはできない仕組みになっているのでございます。

○質問者 ここを争うつもりじゃなくて、今突然こんなふうになって僕もびっくりしているんですが、これは大事なことなんであって、帳簿だとか名簿だとか、そういうものを見せろと言った場合に、嫌だと言う、要するに見せろと言ったときに応ずる義務はないんだということでいいんですか。ないけれども、その場合には犯罪になるんだということなんでしょうか。

○山本(有)政務次官 五条で観察処分というのがございまして、その一つ目には報告義務がございます。その報告義務の中には、人、物、金について詳しく三カ月に一回報告しなければなりません。したがいまして、その帳簿等も恐らく参照できることだろうとは想像しますが、他方で、立入検査という場面もございます。したがいまして、それは重畳的にその帳簿をある程度明らかにはできるでしょうけれども、強制力を使うわけにはまいりませんので、任意的提示、そういうものが原則になろうと思います。
 したがって、先生御指摘のように、もし見せない場合には、それは観察処分から再発防止処分への一つの検査を拒みという概念の中に入ろうかと思いますので、そういうような方向性で考えるべきではないかと存じます。

○質問者 検査を拒みになるんでしょうかね。実際に立入検査をした、帳簿を見せろと言われて見せなかった、それで再発防止処分にいっちゃうんですか。

○山本(有)政務次官 当然、検査結果を明らかにするために必要かつ合理的な範囲の中で、施設や設備の写真を撮影したり事務所の見取り図を作成したりすることができるわけでありまして、必要かつ合理的な範囲、これを超えるわけにはまいらないということでございます。

○質問者 ここばかり聞いていると本当に聞きたいところが聞けなくなっちゃうんでこの辺でやめておきますが、その点、いずれはっきりしたことをまた機会があればお尋ねしますので――じゃ、大臣にひとつ。

○臼井法務大臣 今委員御指摘のとおり、そういった意味ではちょっとかゆいところに手が届かないという感じもいたしますが、御承知のとおり、行政手続の場合は裁判所の令状等を要しないということになっておりまして、義務はあるけれども、その義務に服さない権利も相手様は持っている、したがってその場合は後で刑事罰というものを加える、こういうふうな仕組みになって対応できるということになっているわけであります。

○質問者 時間がないので、納得できないけれども先に――ありますか。

○山本(有)政務次官 八条一項後段に「前条第二項の規定による立入検査が拒まれ、妨げられ、若しくは忌避された場合であって、当該団体の無差別大量殺人行為に及ぶ危険性の程度を把握することが困難であると認められるときも、同様とする。」これに当たると解釈しております。

○質問者 そこはそのようにお聞きしておきます。
 この立入検査は公安調査庁の長官または警察庁長官の指示を受けた警察本部長の命によって行われることになっておるわけでございますけれども、本法による立入検査の場合には、今大臣がおっしゃったように、まず令状が要らない。それから、検査する設備、帳簿類等の特定も要らない。また、差し押さえ令状、これは刑事の差し押さえ令状ですと罪名が入っておりますので、何の罪によって、何の嫌疑によって差し押さえ、捜索されたかわかるわけですが、本法による場合は令状がないわけですから、どういうことで立入検査を受けているのかわからない、こういう事態になるわけでございますけれども、憲法三十五条ではこう書いてあります。「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」こういう条文があるわけでございます。
 今、令状も要らない、それから検査する帳簿、施設の特定も要らない、理由を告げることも要らない、こういう立入検査の仕方というのは、この憲法三十五条の精神から見ていかがでございましょうか。

○臼井法務大臣 委員御指摘のとおり、本法による立ち入りというのは、令状も不要である、検査対象物の特定が不要、立入検査の理由の告知も不要である、こういうことでございますが、私どもの本法による立ち入りというものは、団体の役職員または構成員が団体の活動として過去に無差別大量殺人行為を行い、かつ現在においてもなお危険な要素を保持している団体について、その活動状況を継続して明らかにする必要があるとして観察処分に付された場合でございます。団体の活動を明らかにするために特に必要があると認められたときに限り観察処分の実施の一環として行われるものでございます。
 御指摘のとおり、本法案の立入検査に対して裁判官の発する令状、検査対象物の特定あるいは立入検査の理由の告知は不要となっておりますけれども、この立入検査は、先ほど申し上げましたとおり、刑事上の処罰を目的とする手続ではございません。刑事事件の資料収集に直接結びつく作用を一般的に有しないこと、それから立入検査の拒否、妨害等については刑事罰が科されておりますが、その強制の様態、程度は間接的なものにとどまっている、直接強制力は有さない、また、このような観察処分に付された団体の活動を明らかにするという必要性、公共性及び緊急性は極めて高い、立入検査はこの目的実現の上で必要不可欠であること、それらのことを考慮した上で十分に合理性がある、また、憲法三十五条の法意に反するものということには私どもは考えておらないのでございます。

○質問者 捜査ではない、行政手続だということをおっしゃいましたが、これは国家の側から見た理屈でありまして、住居に侵入される側から見れば、それが捜査であろうと行政手続であろうと、全く家庭の平和、住居の平和、静ひつを害されることには何ら変わりはないわけでありまして、憲法三十五条は、国家と国民の間の基本的人権を定めた、その住居に侵入する、家庭の静ひつを侵す最も典型例として捜査というのを挙げているわけであって、国民の静ひつを守るという観点から見れば捜査も行政手続も同じじゃないか、国民は国からむやみやたらに家庭に入ってもらっちゃ困るんだという、これが憲法三十五条の精神じゃないのかなというふうに私は思っておるんですが、そういう観点から見れば、今大臣のおっしゃったことは国から見た理屈であって、家庭に入られる立場から見た理屈じゃないんじゃないかなと思うのですが、いかがなものでしょうか。

○臼井法務大臣 本法に関して考えてみますれば、こうした立ち入りが行われるということに至ったその主たる原因ということは、まさに冒頭に申し上げました二つの大きな要件、過去に大量無差別殺人行為を実行した団体である、こういう団体が引き続き強い勢力を残して活動している、こういう相手に対してこの立入検査というのは行われるということを考えますと、私は許容できる範囲ではないだろうか、このように思っておる次第でございます。

○質問者 この立入検査の対象として、七条二項は「設備、帳簿書類その他必要な物件」となっておりますが、その範囲は一体どこまでなのか。設備はどこまでの設備で、どこまでの帳簿書類なのか、その範囲はどこまでかということと、その範囲はだれが、いつ判断するのか、これについてはいかがでしょうか。

○臼井法務大臣 どこまでが許容の範囲かというお尋ねでございますが、これは、団体の活動状況を明らかにするために必要かつ合理的な範囲の一切の物件である、こういうことが申し上げられると思います。
 また、立入検査における検査の場合は、必要な物件というものを五官の作用によって調べる、こういうことを意味しておりまして、検査の範囲の相当性につきましては、第一義的には、現場で調査に当たる公安調査官や警察職員がその現場の状況に応じて判断すべきものと考えておる次第であります。

○質問者 そうなんですよね。第一義的には、今大臣おっしゃったように、その調査に当たる現場の公安調査官なり警察職員が判断するんだと。
 そうすると、その判断は、現場の調査する立場の人にある意味では全く白紙委任されているんじゃないかなという感じを受けるんですが、いかがでしょうか。

○臼井法務大臣 おっしゃるとおり、現場の調査官にその権限というものは任されている次第でございます。
 しかし、これは単なる白紙委任ということではございませんで、本法の第三条におきましては、第一条の目的を達成するためには必要最小限度において行えるというふうに規定をいたしておりますし、調査に当たる調査官や警察職員は、その規定の趣旨を踏まえて、必要かつ相当と認められる範囲ということにいたしております。
 また、先ほど来申し上げましたとおり、公安調査官等の職権濫用に対しては刑法よりも重い罰というものがかけられている、こういうことによって自制措置がとられていると私どもは理解をいたしております。

○質問者 必要かつ合理的な範囲で検査をするんだ、こういうふうになると思うのですけれども、捜査もそうなんですが、やはり現場に行けば行くほど、もう少し、もう少しということでそれが広がっていく。刑事事件の場合には広がらせないために令状できちっと明示したわけですよね。ところが今回は令状で明示がないわけですから、ある意味では、事後的には今大臣がおっしゃったように罰則が設けられて逸脱ができないと言われているけれども、現実には逸脱をする可能性が十分あると私は思っております。

 

 

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