十数年前の大(空)騒ぎの真っ最中、96年5月15日に開かれた第3回の弁明手続において、麻原教祖と代理人弁護士の間で、この「奪還」をめぐる問答がありました。
ここで実に、「奪還」について問われた教祖は、「洞穴」で返したのです。
この時の問答は次のとおりです。
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(教団代理人)では、麻原代表に弁明を進めていただきたいと思うんですが、いいですね。
(麻原彰晃)はい。
(教団代理人)まず、破防法は適用の要件として、オウム真理教が継続または反復して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認める十分な理由がなければならないというふうにされています。その場合、何か事件を起こすかもしれないということでは絶対に要件に該当しないわけで、要件を満たすためには何よりも暴力主義的破壊活動を行うおそれがあることが必要であり、そして第2に、そのおそれの程度が明らかなおそれがあると認める十分な理由があるだけ確実なものでなければならないわけであります。暴力主義的破壊活動とは、内乱、外患に関する罪か、あるいは政治上の主義もしくは施策を推進し、支持し、またはこれに反対する目的を持って行う騒乱であるとか、放火であるとか殺人、強盗などの一定の凶悪犯罪に限られているわけです。
そもそもオウム真理教が、こういう暴力主義的破壊活動を構成するような政治目的を持っていたという公安調査庁の主張が誤っていることについては、後で麻原代表から詳しく説明してもらう予定でありまして、したがって、将来についても、そもそも暴力主義的破壊活動に該当する事実があり得ないということは明らかだと我々は考えておるわけですが、まず冒頭に麻原代表自身の口から、この暴力主義的破壊活動であれ何であれ、将来みずから犯罪を犯したり、あるいはオウム真理教の信徒に犯罪を指示する考えを有しているか否かについて述べていただきたいと思います。
(麻原彰晃)ちょっときょうは緊張しておりまして、申しわけございません。言葉が足りない部分があるかもしれませんので、それはご容赦いただきたいと思います。
私は、逮捕されてきょうでちょうど1年になります。そして、この逮捕された後、いろいろと教団のことについても考えてきたわけですけれども、まず将来において、オウム真理教が法の規制を破り、そして破壊活動を行うことは決してないし、また私も、そのような指示をするつもりはない。また、もう一つ言えることは、もしそのようなことがわかったら、即座にとめたいと考えています。これがまず第1点です。
それから、第2点、特に今、私は起訴勾留の身でございます。したがって、この起訴勾留に対して奪還がうわさされていますが、これは現にサマナ、あるいは信徒もよく新聞等を通じて聞いてほしいことですが、この東拘、東京拘置所の部屋は非常にコンクリートが厚く、非常に洞穴に近いと私は考えております。これは、ここに集まっていらっしゃる方々には感覚的にわからないかもしれませんが、私としては今、個人的な見解ですけれども、個人的な意見ですけれども、絶好の瞑想の機会を得ていると考えているわけです。したがって、この今の私の機会を阻害するようなことは何人たりとも行ってほしくないし、もちろんそれについては拒絶したいと考えております。
(教団代理人)今、あなたの方で犯罪、あるいはみずからの奪還、こういう意思もないし、だれかに指示する考えもない。この考え方は、今後、未来永劫にわたって変わることがないというふうに聞いていいですか。
(麻原彰晃)はい。これは私がこの人生を終わるまで変わることはないとお聞きになってよろしいと思います。
(教団代理人)将来、もし接見禁止処分が解けて信徒の人や、あるいは一般の人と接見が可能になる可能性があるかもしれない。あるいは裁判所において供述する機会があるかもしれないわけですが、そういう場で何か犯罪を指示したり、あるいはみずからの奪還を求めるというようなことはないと断言できますか。
(麻原彰晃)はい、もちろん断言できます。断言できますし、また、そのようなことを心に思ったこともありません。
(教団代理人)そうすると、これまで過去に信徒に対して自分の解放であるとか、奪還であるとか、こういうことを求める発言をしたこともないということですか。
(麻原彰晃)一度もございません。