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団体規制法/観察処分

足立区団体規制条例

長官銃撃国賠訴訟

裁判日程

訴状 (1/4)

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訴    状

2011年4月15日

東京地方裁判所民事部 御 中

原告訴訟代理人
弁 護 士

当事者  別紙当事者目録記載のとおり

 

過料処分取消の訴え
訴訟物の価額      160万円
貼用印紙額     1万3000円

 

 

目 次

請求の趣旨
請求の原因
第1 当事者
第2 本件処分の存在
第3 原告が報告をしない「正当な理由」が存在すること
 1 はじめに
 2 原告は観察処分を受けた団体とは異なること
 3 報告義務がどのような場合に生ずるか不明確であること
 4 報告するべき事項が不明確であること
 5 公表による不利益が大きく不測の事態があり得ること
 6 足立区行政手続条例違反
 7 本条例は憲法に違反し条例としての効力がないこと
第4 本条例は憲法違反の条例であること
 1 本条例の内容
  (1) 本条例において団体及び構成員に課せられる義務
  (2) 本条例は重大な人権の侵害を含んでいること
 2 立法事実がなく人権制約の原理に背いていること
 3 違憲審査基準に適合しないこと
  (1) 目的が正当化されないこと
  (2) 規制する必要性が存在しないこと
  (3) 規制手段の相当性が存在しないこと
 4 特定の団体を狙った措置条例であること
 5 本条例が条例制定権の範囲を逸脱していること
  (1) 本条例と団体規制法との関係
  (2) 団体規制法は同一の目的による条例での規制を許容していないこと
  (3) 国際人権自由権規約も人権制約は法律によるべきとしていること
 6 適正手続違反
 7 建物への立入りを許容する規定の憲法違反性
  (1) 本条例に調査の内容
  (2) 本条例の強制調査としての性質
  (3) 目的、必要性、手段の相当性の観点からみた憲法違反性
  (4) 憲法35条の令状主義違反
第5 結論

 

請求の趣旨

1 足立区長が2011年3月8日付で原告に対してした金5万円の過料に処するとの処分を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
  との判決を求める。

請求の原因

第1 当事者

 

1 原告は、旧オウム真理教を承継する組織であるが、2000年2月4日に新たな綱領・規約を定めて、改めて入会手続をとり、宗教団体・アレフとして組織を刷新し、2003年2月6日に宗教団体アーレフと名称を変更し、2008年5月20日にも綱領や規約を改めた上で、Alephとなっている宗教団体である。
  2 被告は、東京都の特別地方公共団体であり、被告の代表者である足立区長は、請求の趣旨第1項の行政処分(以下「本件処分」という)をした行政庁である。

第2 本件処分の存在

 

足立区長は原告に対して、2011年3月8日、足立区反社会的団体の規制に関する条例(甲2・以下「本条例」という)10条の規定により、金5万円の過料に処する処分をした。処分の理由は、本条例5条2項により、原告には足立区長に対する報告するべき義務があるところ、報告をしていないというものである(甲1)。

第3 原告が報告をしない「正当な理由」が存在すること

1 はじめに

 

原告が足立区長の求める報告をしていないことは事実である。しかし、後に詳述するように、本条例は、わが国の憲法に違反する条例である。
  また、本条例10条は、「正当な理由なく第5条第2項の報告を拒み、又は虚偽の報告をしたとき」に、5万円以下の過料に処すると規定しているが、原告が報告をしないことには、以下のとおり、正当な理由がある。

2 原告は観察処分を受けた団体とは異なること

 

本条例3条は、この条例において「反社会的団体」とは、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成11年法律第147号)第5条第1項に規定する観察処分を受けた団体をいうと規定する(以下この法律を「団体規制法」という)。
  ところで、本条例にいう観察処分を受けた団体とは、「麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することを目的とし、同人が主宰し、同人及び同教義に従う者によって構成される団体」であって、明らかに原告と同一の団体ではない(甲3)。観察処分を受けた団体を主宰する代表者は麻原彰晃こと松本智津夫とされており、当該団体に報告義務があるというのであれば、当該団体の代表者である麻原彰晃こと松本智津夫に対して報告することを通知し、報告を命ずるべきである。しかし、足立区長はそのような手続をとっていない。
  したがって、原告には、本条例5条に規定する報告義務はそもそも存在しないというべきである。

3 報告義務がどのような場合に生ずるか不明確であること

 

本条例5条2項は、反社会的団体は、区の区域内において活動し、又はその構成員を居住させようとするときは、次に掲げる事項を定期的に区長に報告しなければならないと規定する。
  この規定によれば、「区の区域内において活動し、又はその構成員を居住させようとするとき」に、足立区長への報告義務が生ずるということになる。しかし、「活動し(ようとする)」とか、「居住させようとする」との規定自体、極めて曖昧であって、どのような場合に、報告義務が生ずるのか明確とはいえない。
  報告義務がどのような場合に生ずるのか明確でない以上、これにより報告義務が存するとすることはできない。

4 報告するべき事項が不明確であること

 

「反社会的団体」が足立区長に報告するべき事項は、本条例及び足立区反社会的団体の規制に関する条例施行規則(甲4・以下「本条例施行規則」という)によれば、次のとおりである。
@ 区の区域内において活動し、又は居住する当該団体の役職員の氏名、住所及び役職名並びに構成員の氏名及び住所(本条例5条2項1号)
A 足立区の区域内における活動に係る団体(その支部、分会その他の下部組織を含む)の意思決定の内容(本条例施行規則2条3項1号)
B 区内における団体の活動の用に供されている土地及び建物の所在、地積又は規模及び用途(同2号)
C 「反社会的団体」が区内において土地又は建物に係る権利を取得し、当該団体の構成員が拠点として活動し、又は居住する場所を整備しようとする場合における当該整備計画の概要(同3号)
  しかし、このうち、@の区域内において活動する役職員・構成員とは何か、Aの区域内における活動に係る団体の意思決定の内容とは何か、支部、分会その他の下部組織とは何か、Cの拠点として活動する場所とは何か、整備計画とは何かなど、何を報告の内容とするべきかが、不明確である。
  このように、報告するべき事項が不明確である以上、報告することはできない。

 

 

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