裁判・事件等
ホーム > 裁判・事件等 > 団体規制法 / 観察処分 > 拡張される団体規制 [3-(2)]
image
裁判・事件等
団体規制法/観察処分

足立区団体規制条例

長官銃撃国賠訴訟

裁判日程

拡張される団体規制 〜「構成員不詳」「主宰者不在」の架空団体への観察処分[3-(2)]

line

3.「主宰者」の架空性

(2)置き去りにされる「主宰者」――公安審の論理破綻

 麻原開祖の控訴審では、結果的にその訴訟能力を認める決定が出されたものの(06年)、それはあくまでも「弁護人による補助」を前提とし、不当にも、訴訟能力を単なる「生活能力」と同程度に解釈した上でのことでした。

【資料M】東京高裁 控訴棄却決定書

「仮に被告人が自ら訴訟を追行する能力を欠いている場合であっても、必要的弁護事件においてはもとより、任意的弁護事件においても裁判所が後見的な見地から職権で被告人に弁護人を付することになると考えられるから、弁護人からの適切な援助を受けながら訴訟の追行に当たることが可能である限り、被告人の訴訟能力は保たれているものということができる
 なお、この点に関連して、ここで、被告人の日常生活上の言動自体から被告人が有していることが明らかな生活能力と訴訟能力との関係について触れておくと、一般論としては、被拘禁者が職員の指示に従ったり、食事を自力で摂取したりする能力と、その者の訴訟能力との間には大きな懸隔があるように考えられがちであるが、それは被拘禁者が弁護人の援助を得ることなく一人で裁判の追行に当たることを前提とするからであって、そうではなく、弁護人の適切な援助を受けながら裁判の追行に当たる場合を考えてみると、前記(1)の冒頭で述べたとおり、被告人本人には裁判で問題となっている重要な事柄の利害を認識、判断し、それを踏まえて弁護人と意思疎通する能力があれば足りることになり、その能力の差はそれほど大きくないと考えられることになる。そうであるとすれば、本件において、被告人が職員の指示に従ったりできることは、被告人が訴訟能力を有することをうかがわせる間接事実といえることになるのである」

(2006年3月27日付控訴棄却決定書)

 その上で東京高裁は、麻原開祖の精神状態に何らかの異常が生じていることを示唆するとともに、精神活動の低下と拘禁反応については明確に認めているのです。

【資料N】東京高裁 異議申立審決定書

「被告人に訴訟能力があるという結論に達したからといって,被告人の精神状態が完全に正常であることを意味するものではない。鑑定人をはじめ多くの医師が被告人が拘禁反応下にあり,正常であるとはいえないと述べているからである」(2006年5月29日付異議申立審決定書)

「東京拘置所での日常生活の様子等にもかんがみると、精神活動の低下もきたしていることを示しているのではないかと思われることに照らすと、被告人の現在の症状は拘禁反応であるとみてよいと思われる」(同上)

 また、控訴が棄却されてからも、2007年11月には、日弁連から東京拘置所に対して麻原開祖への治療勧告が行なわれています。

【資料O】日弁連による治療勧告書

被拘禁者A(※麻原開祖)は長期拘禁によるものと思われる拘禁反応を示している。
 被拘禁者Aの現状については、各医師の見分、事件委員会の見分等から明らかになっており、それらの事実について各医師の判断は、拘禁反応を呈しているという点においていずれも一致している。
 この拘禁症状は、被拘禁者Aが人間として最低限の生活を自立して行うことができない状態にあると見ることができる。特に重視しなければならないのは、拘禁反応の症状のひとつである『昏迷』の結果として自らの安全を自分の意思で確保することができなくなっているし、いつなんどき興奮状態に陥り負傷するかもしれない事態も予測されるということである。」(2007年11月6日付日弁連総第61号)

「収容されている被拘禁者Aが長期拘禁による拘禁反応としての重篤な精神障害に罹患していると思われるので、施設外の精神科医による診察のうえ、抗不安薬の投与による薬物療法、若しくは医療刑務所またはこれに準ずる施設において治療を行う等の適切な医療措置を速やかに実施すること。」(同上)

 

 しかし、その後も麻原開祖への治療が施されることはなく、勧告の時点(07年)からさらに病状が進行している可能性もありました。
 にもかかわらず、06年からおよそ3年間の調査を経て、公安調査庁が08年末に行なった更新請求には、現在の麻原開祖についての言及は皆無でした。99年の原処分の請求時と同様、ただサリン事件以前の説法の引用に終始し、それ以外には、唯一、10年前の法廷でのいわゆる不規則発言が「最新」の証拠として引用されているのみだったのです。そして、その他の膨大な証拠の大半は、麻原開祖と今や何の接触もない、Alephやひかりの輪の活動を事細かに報告するばかりでした。
 同様に公安審査委員会も、審査の過程でAlephが申し立てた調査請求を無視し、団体主宰能力の有無を含めた麻原開祖の現状について、何ら調査を行なおうとしませんでした。
 つまり、今回の更新決定は、現実の麻原開祖について何も語ることなく隠蔽し、10年前の不規則発言や、今の教団では使用されていない20年も前の説法など、過去の言動にのみ目を向けて行なわれたのです。
 そもそも、「殺人の指示ができるのは麻原だけ」というのがこれまでの公安審の認定です。にもかかわらず、当の麻原開祖の調査なしに団体の危険性を結論づけることは、審査の重大な欠陥にほかなりません。
 今回の決定は、その本質においてまさに論理破綻しているのです。「はじめに結論ありき」の不当で違法な決定といわざるを得ないゆえんです。

 

 

コーナー目次に戻るこの記事の目次 前の記事|次の記事

このページの上部へ