その一方で、「現実」と「立法目的」の間の大きな矛盾について、当時、全く自覚されていなかったというわけではありませんでした。だからこそ、この法律について「五年ごとに廃止を含めて見直しを行う」という時限立法的な条項が、目的規定の修正(「国民生活の平穏の確保」)と併せて、附則として追加することが一部議員によって求められたのでした。
しかし、教団に対する関心自体が低下する中でそうした自覚も次第に薄れ、結果的に、観察処分は9年間にわたって漫然と更新されてきました。現在の状況は、立法時から存在していた根本的な矛盾が、度重なる更新を通じて肥大化し、誤魔化しようもないほどに顕在化したものだということができるでしょう。
今求められていることは、観察処分をただ漫然と更新し続けることなどではありません。立法当時の状況を含めて、改めて団体規制法/観察処分の10年間を冷静に検証することなのです。
【資料R】団体規制法制定時の国会審議(時限立法的附則の追加)
○荒木議員 …民主党、公明党の修正案提案者にそれぞれお聞きをいたしますが、先ほど第一条の目的の修正のお話もありましたけれども、私はむしろ、この附則の「五年ごとに、」「廃止を含めて見直しを行う」というところが一番ポイントじゃないかというふうに考えるわけなんです。この附則の修正について、どういう意味合いにおいてこのような修正案を提案をし可決をしたのか、それぞれお聞かせ願いたいと考えます。
○北村議員 先ほど荒木委員が信教の自由の大切さについて述べられました。私どもも、この法案が国民の権利に重大な影響を及ぼしかねない法律であるということを強く認識しております。
そこで、政府案に対して私ども修正を求めた点は五点ありますけれども、…五番目に、まさに大事だと言われた、こういう法律をいつまでも置いておくと、これだけのかなり厳しい法律であるならば五年もたてば目的を達成できるだろう、またできないような法律ではつくる意味がないというぐらいのつもりで、そういう決心で五年たったらちゃんと廃止を含めて見直せと。そうでないと、法律がひとり歩きをしてオウム真理教でない別の団体までに適用されて、国民の権利侵害が一般的になってしまうだろうと。そういうことを防ぐために五年の時限立法を求めている。(99年11月25日参院法務委員会)