裁判・事件等
ホーム > 裁判・事件等 > 団体規制法 / 観察処分 > 公安調査庁に提出した文書(2010年1月〜10月) > 求釈明並びに要請書
image
裁判・事件等
団体規制法/観察処分

足立区団体規制条例

長官銃撃国賠訴訟

裁判日程

求釈明並びに要請書

line

平成22年3月28日

公安調査庁長官

北田幹直 殿

団    体    名  Aleph
主たる事務所の所在地 埼玉県越谷市■■●-●-●
              name

 

求 釈 明 並 び に 要 請 書

 本書面は、衆議院議員●氏の運営するホームページに著された、立入検査の調査結果に関する記述につき、貴庁に求釈明を行なうとともに、立入検査の実施のあり方について要請を行なうものである。

 ●議員の運営するホームページの2月23日付に以下の記載がある。

※略(同ホームページからの引用)

 これによると、「公安調査庁立ち入り調査報告会」と銘打った報告会が行なわれていることと、「公安調査庁の立ち入り調査による中の実態を、スライドショーで見せていただき、住民の皆様と一緒に質疑応答。」といった記述があることなどから、団体規制法5条の処分に基づく立入検査の結果について、地域住民や自治体関係者に提供していることが明らかである。

 ところで、団体規制法32条によれば、

公安調査庁長官は、関係都道府県又は関係市町村(特別区を含む。)の長から請求があったときは、当該請求を行った者に対して、個人の秘密又は公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除き、第五条の処分に基づく調査の結果を提供することができる。

とされ、「第五条の処分に基づく調査の結果」は、「当該請求を行った者」、すなわち、「関係都道府県又は関係市町村(特別区を含む。)の長」に対して提供できること、さらにそれは「個人の秘密又は公共の安全を害するおそれがあると認める事項を除き」、提供できることが規定されている。

 しかし、●議員のホームページの記載によると、公安調査庁が地域住民に「中の実態を、スライドショーで見せて」いるとされている。立入検査では、居住者の個人の秘密を侵害するような情報も写真撮影されており、それらが地域住民に提供されている可能性が考えられる。つまり、@提供される対象と、A提供される内容の、2点にわたる違法の可能性が思料されるのである。

 そこで、検査対象たる当団体は、個々の会員におけるプライバシーを含む基本的人権を擁護しなければならない立場から、貴庁に対して、以下の求釈明を行なうので、貴庁におかれては、違法の疑念を払しょくするためにも、明確に回答されたい。

1.「第五条の処分に基づく調査の結果」を、貴庁から直接的に地域住民に対して提供できる法的根拠は何か、明確にされたい。

2.「スライドショー」を行なったとされる同報告会では、具体的にどのような報告を地域住民らに対して行なったのか、「スライドショー」で見せた内容のみならず、その他にも地域住民らに提供された情報がいかなるものだったのか、釈明を求める。これにより、報告した内容について、個人の秘密を害するものではないということを明らかにされたい。

3.貴庁が発刊している年次報告書「内外情勢の回顧と展望 平成22年(2010年)1月」の40ページには、「公安調査庁は、教団施設周辺の地域住民との意見交換会を11月末までに32回開催し」たとあるが、金沢以外の地域における「意見交換会」においても、同様のスライドショーが行なわれているのか、明らかにされたい。

 なお、団体規制法の唯一の解説本である『オウム真理教の実態と「無差別大量殺人を行った団体の規制に関する法律」』(立花書房)の148ページには、同法32条の解説として「『調査の結果』とは、報告書等の現物ではなく、関係地方公共団体の個別・具体的な必要性に応じた内容を記載した書面となる。」とされている。これからすると、「中の実態」をスライドショーで見せるというやり方は、同法の本来の趣旨から逸脱するものと言える。
  なかんずく、立入検査時に「中の実態」を写真撮影したものは、プライバシー空間が含まれているものが多いと思料される。当団体会員の生活形態は、仕事場にさえ、プライバシー空間が介在する場合が多いからである。かかる意味合いからしても、「中の実態」をスライドショーで見せるという手法は、個人の秘密を侵害する蓋然性の高い不適切な手法であると言えるので、仮に地域住民に直接的に情報提供できる法的根拠があったとしても、厳に差し控えるべきである。

 ここで、貴庁による立入検査が、当団体会員のプライバシー権を侵害する行き過ぎたものであることについて、改めて指摘する。
 
  そもそも、団体規制法は、わが国も批准しており、国内法的効力を有する国際人権自由権規約に違反している可能性が高い。同規約17条1項は、すべての人に対するプライバシー権を定めたものであり、規約委員会は「一般的意見」において、個人のプライバシーの干渉を正当化する法律及び規則は、「干渉が許される条件を正確に細部に渡って明記しておかなければならない」(一般的意見16の8)と述べている。しかし、団体規制法及びその下位法規は、観察処分に基づく立入検査において、検査を実施する公安調査官が居住者のプライバシー権を侵害しないようにどのような行動を採るべきかの行為規範を示しておらず、すべて現場における担当当事者の裁量的判断に委ねている。

 その結果として、現実に検査官の個々の裁量により居住者のプライバシーが侵害されており、それについては当団体も貴庁に対して再三にわたる抗議・要請を繰り返してきたところである。かかる検査によって得られた情報が、さらに無造作に地域住民等に公開されているとするならば、まさに由々しき人権問題であり、到底看過することはできない。
 
  貴庁としては、更新決定時の公安審査委員会の談話でも求められているとおり、立入検査など観察処分の実施に際しては、関係人の基本的人権に配慮する必要があるので、付与された裁量的判断により、むしろ、プライバシーを侵害しない抑制的な検査を行なう義務があるというべきであり、その義務を全うすることを、改めて要請するものである。

 また、かかる状況を踏まえるならば、当事者たる当団体は、上記・求釈明事項について、当然に知る権利があるし、貴庁には回答する義務があるというべきである。

 地域住民の不安を解消したいという思いは、当団体も、貴庁も、●議員も、同じはずである。当団体は地域住民の不安を解消するためにも、これまで様々な形で貴庁の立入検査に協力するよう、会員に要請してきたが、仮に、貴庁が会員個人の秘密を侵害する形で報告会を開催していることが判明したり、あるいは、貴庁が上記・求釈明事項に明確に回答せず、会員個人の秘密が侵害されていないという確証を当団体が得られなかったりすれば、一部の会員が貴庁に対して疑念を抱き、立入検査の現場において混乱が生じる虞もあるので、その点を十分に留意したうえで、誠意ある対応をされたい。

以 上

 

 

コーナー目次に戻る団体規制法/観察処分の目次この記事の目次

このページの上部へ