前回(06年)の観察処分更新以降の3年間は、教団のいわゆる「分裂」問題や、麻原開祖の精神鑑定の問題など、教団内外に様々な大きな変化がありました。
しかし、これらの変化を全く顧みることなく規定されている対象団体は、前節で述べたように、単に不当に「拡張」されているというにとどまらず、もはや団体としての実体を欠いた、まさに「架空団体」と言い得るものです。
団体規制法とは「団体」を規制する法律である以上、当然、その対象は実在する「団体」でなければなりません。
何をもって「団体」とするかについては、この法律では「特定の共同目的を達成するための継続的結合体又はその連合体」と定義されています。この定義の仕方は、過去の団体規制に関連する法律(治安警察法、治安維持法、破防法)から変わっていません。
そして、「結社」に関する治安維持法の解釈で示されているように、「団体」を構成する「構成員」といい得るためには、多数人が特定の「共同目的」を「共に」「知悉し」「相協力し」「達成」しようとする結合性・共同性が必要とされています。
【資料K】治安維持法における「結社」の要件
(治安維持法の「結社」の要件)
「叙上国体変革目的は被疑者単独の認識にあらず、王仁三郎以下の大本幹部を初め多数の信者が共に知悉し大本信者等が共同の目的として相協力し之が達成を期しつつあるものなることの認識」
(大本教への治安維持法適用に関する内務省警保局長の答弁)
しかし、今回の更新決定では、約1700人いるとされる「構成員」が、どのような仕方で継続的に結合し、共同しているかについては、何の説明もされていないのです。
上記のように「団体」に関する法律上の定義・要件が長らく引き継がれてきたことを見ると、根拠なき「構成員」の拡張は、「団体」概念の本質的かつ歴史的な変質であると言わざるを得ません。
【資料J】団体規制の各法律における「団体」の定義
・治安警察法(大審院判例)
「(結社とは)一定の共同目的のために結合せる特定多数人の団体」
・治安維持法(政府委員答弁)
「ここにいう結社は治安警察法その他の結社ということと変わりはありませぬ。多数人が集合致しまして、或る目的のために継続的に結合するのが結社であります」
・破防法(4条)
「この法律で「団体」とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体をいう」
・団体規制法(4条)
「この法律において「団体」とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体をいう」